軍政下のタイ、24日に8年ぶり下院選 外資への影響は

2011年以来初のタイ議会下院(定数500)総選挙が24日に投票日を迎える。即日開票され、同日中に大勢が判明する見通しだ。

2014年の軍事クーデターでタクシン元首相派の政権を倒し発足したプラユット軍事政権が、民主化を求める国内外の圧力を受け、下院選の実施を受け入れた。

選挙はプラユット首相(元陸軍司令官)の続投を目指す軍政派・反タクシン派と民政復帰を掲げるタクシン派が正面衝突する構図だ。反タクシン派は軍政派の新党であるパランプラチャーラット党とタイ最古の政党で保守派の民主党に票が分かれ、タクシン派は裁判所による自派政党の解党で勢力をそがれるなど、情勢は混沌としている。

ただ、軍政が作成、施行した新憲法の規定で、軍政が議員を事実上選任する議会上院(定数250)が議会下院とともに首相指名選挙で投票するため、軍政派・反タクシン派は下院で130議席程度を確保すれば政権を維持できる。下院選自体もタクシン派のプアタイ党など大政党に不利な制度に変更されたため、全体的な状況は軍政派・反タクシン派が優位とみられる。

また、軍政派・反タクシン派は、政府の介入が排除された国家内国家的な立場の軍をコントロールする上、新憲法を通じ、上院、司法などに影響力をふるう。憲法改正は条件が非常に厳しく、タクシン派が政府を樹立したとしても、軍政派・反タクシン派に包囲されたかたちで、政権運営は困難だ。

タイではタクシン政権(2001―2006年)以来、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、伝統的な富裕層、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治社会が混乱している。反タクシン派が重視する伝統的な階級民族秩序に東北部、北部の住民と低所得者層が挑戦する形で、タクシン派が2001年以来、すべての下院選で勝ち続ける一方、反タクシン派は軍と司法、デモを駆使してタクシン派政権をひっくり返し、事態が収拾するめどは立っていない。

両派の対立が外国資本や外国人の排斥につながったことはなく、下院選で軍政派・反タクシン派、タクシン派のいずれが政権を発足させても、外国企業や在住外国人への対応に大きな変化はないとみられる。ただ、軍政によるたがが外れることで、両派の対立が激化し、将来的にバンコクなどで大規模はデモが発生する可能性はありそうだ。

《主要政党の動向》

■タクシン派、王女擁立で自爆

タクシン派のプアタイ党は有力女性政治家のスダーラット元保健相、バンコク都民や若者に人気のチャチャート元運輸相ら3人を首相候補に擁立し、選挙戦に臨んだ。

タイ国立開発行政研究院(NIDA)が2月に実施した政党支持率調査(回答者2091人)では支持率36.5%と1位で、下院で第1党になると予想される。ただ、軍政との対決姿勢をみせる新未来党、セーリールワムタイ党と組んでも、政権樹立に必要な376議席の獲得は困難とみられる。

タクシン派は今回の下院選で、比例代表制の変更に対応し、中核となるプアタイ党のほかに、タイラクサーチャート党など衛星政党を立ち上げ、議席の取りこぼしを減らす作戦に出た。しかし、タイラクサーチャート党の首相候補として、ワチラロンコン国王の姉のウボンラット王女を擁立した結果、憲法裁判所が今月8日、立憲君主制に敵対する行為を禁じた政党法に違反したとして、タイラクサーチャート党に解党処分を下した。タイラクサーチャート党から出馬した候補者は全員が立候補取り消しとなり、タクシン派の選挙戦略は崩れ去った。

ウボンラット王女の擁立は、成功すれば、王室を中心とした階級民族秩序を重視する反タクシン派を無力化し、情勢を一変させる奇策だったが、立憲君主制に反する行為として国王が反対し、とん挫した。ただ、ウボンラット王女がタクシン派についたという事実は残り、タクシン派を勇気づけそうだ。

■軍政派、上院票で優位

プラユット首相の続投を目指す軍政はパランプラチャーラット党を結党し、選挙戦を戦った。同党はウタマ工業相が党首、ソンティラット商務相が幹事長を務めるなど軍政の4閣僚が参加(選挙活動中に閣僚を辞任)。NIDAの2月の政党支持率調査では支持率22.6%と2位だった。

首相指名選挙で勝利するには、上院の250票に下院で126議席以上を上乗せする必要があるが、単独で126議席を得るのは困難で、同じ反タクシン派陣営の民主党か、プームジャイタイ党など旗幟を鮮明にしていない中小政党と連立を組む必要がありそうだ。

■民主党、アピシット党首の首相復帰狙う

民主党は同じ反タクシン派の票をパランプラチャーラット党に食われ、苦戦が伝えられる。NIDAの2月の政党支持率調査では支持率15.2%と3位。地盤の南部で反軍政の新未来党の急追を受けているとも報じられた。ただ、次期政権は同党がパランプラチャーラット党、プアタイ党のどちらにつくかで決まるという見方があり、動向が注目を集めている。

同党のアピシット党首(元首相)は今月に入り、(1)プラユット首相の続投を支持しない(2)パランプラチャーラット党との連立は排除しない(3)プアタイ党との協力には否定的(4)民主主義を制限する現行憲法の改正に前向き――という立場を表明した。(1)(4)はタクシン派・反軍政派の各党と同じ、(2)(3)は反タクシン派という立ち位置だ。

パランプラチャーラット党はプラユット首相以外の、民主党はアピシット党首以外の首相候補を登録していないため、パランプラチャーラット党が民主党と連立を組むためには、プラユット首相の続投を断念し、アピシット党首の首相就任を支持する必要がある。一見無理な要求のようだが、反タクシン派陣営にとって、意外に都合のいい解決策という見方もある。まず、アピシット党首が首相になれば軍政色が薄れ、対外的なイメージが好転する。また、2008―2011年のアピシット政権は民主党、プームジャイタイ党などの連立で、今回似たような組み合わせとなっても、意思疎通は比較的円滑とみられる。プラユット首相自身はアピシット政権で陸軍第1管区司令官、陸軍司令官を歴任した。
(newsclip.be 2019年3月22日 13時42分)

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